Apple Watch Series 4 以降およびすべての Apple Watch Ultra モデルで、心電図アプリと連携することで、心電図を記録することができるようになりました。
実際に役立つのかどうかを、わかりやすく解説します。
結論:Apple Watch心電図は「補助的な簡易心電図」として非常に有用
心房細動の早期発見に役立つ
Apple Watchは心電図アプリと連動することで、心電図を記録することができます。
疾病の徴候を検出し受診を促す家庭用医療機器として認定されています。
厚生労働省:「家庭用心電計プログラム」及び「家庭用心拍数モニタプログラム」の適正使用について
しかし、すべての不整脈を完璧に拾えるわけではありません。
不整脈には、さまざまな種類がありますが、とくに心房細動の兆候をとらえるための補助的な役割を担っています。
また記録ができる心拍数の範囲は、心電図アプリバージョン1では50~120/分、心電図アプリバージョン2では50~150/分です。
Apple Watch で利用可能な心電図 App のバージョンについて
そのため、一般的には病院やクリニックで不整脈と診断された方のフォローアップや確定診断のため使用されます。
Apple Watch心電図の仕組みとは?
片手の指と本体で単誘導心電図を記録
左腕にApple watchを付けた場合には、右手の指(多くは人差し指)でDigital Crownを触ります。
30秒ほどで心電図結果が出ます。結果は、iPhoneまたはiPadのヘルスケアアプリで確認します。
※以下は筆者の実際の心電図です。きれいに記録されていますね。

具体的な方法に関しては、以下のリンクを参照ください。
12誘導心電図とは違い、心臓全体の情報は取得できない
通常の心電図といえば、手足と胸に誘導をつけて、ベッドで横った状態で記録する12誘導心電図というものです。
その名の通り、心臓の電気の流れを12方向から記録したものです。
Apple Watch心電図は単誘導といわれ、12誘導心電図の中のⅠ誘導とほぼ同じ波形が得られます。(ただし、完全に一致するものではありません。)
これは脈の乱れを感知するのに有用な誘導となります。
ただし、心臓全体の電気の流れを見るものではないため、不整脈の鑑別や狭心症、心筋梗塞などの診断をすることはできません。
洞調律・心房細動・高心拍数または低心拍数・判定不能 という4分類
洞調律
正常の脈であることを示しています。
心房細動
脈がバラバラで、1拍1拍の間隔がすべて違う状態です。
いままで洞調律と記録されていたのに初めて認めた場合や、動悸・息切れ・胸の圧迫感・不快感を感じている場合には、医療機関を受診しましょう。
高心拍数または低心拍数
心電図アプリ1では心拍数が50/分以下、または150/分以上が記録されたとき、心電図アプリ2では心拍数が50/分以下、または150/分以上が記録されたときに表示されます。
脈が遅い場合には、正常の脈だけれど脈が遅い(洞性徐脈といいます)、洞不全症候群、房室ブロックなどの可能性があります。
めまい、ふらつき、失神(意識を失ってしまう)などがあれば、病院を受診しましょう。
脈が速い場合には、正常の脈だけれど脈が速い(洞性頻脈といいます)、心房細動、発作性上室性頻拍など診断は多岐にわたります。動悸などの症状があれば病院を受診することが推奨されますが、安静にしている時でも心拍数が速い場合には、自覚症状がなくても病院受診がおすすめです。
いずれの場合でも循環器内科を受診するようにしましょう。
判定不能
これはうまく記録できていない可能性があります。
Apple Watchをつけている腕を机など安定した場所に置くか、バンドをぴったりフィットさせもう一度記録しましょう。
検出できる不整脈と限界
心房細動は高精度で検出可能
約600人の被験者による臨床試験では、洞調律については特異度99.6%、心房細動については感度98.3%の精度で記録できたとされています。
心房細動の診断でのみ臨床データがあるため、現時点ではその他の不整脈に関しては参考程度と考えた方がよいと思われます。
検出が難しい不整脈
上室性期外収縮、心室性期外収縮
脈が予定よりも早く出るというものです。自覚症状としては、脈が抜ける感じがしたり、一瞬胸の不快感を覚えたりします。
洞不全症候群、房室ブロック
脈が遅くなる不整脈です。この不整脈を診断するためには、12誘導心電図が最も優れています。これは心電図で心房の収縮を見るP波という波形が、1方向の電気の流れでは正確に診断ができないことによるものです。
実際の診療現場でも活用事例は増えている
臨床の現場でもご自身でPDFの記録を持参して頂ける患者さんもいらっしゃいます。
また心房細動に対してカテーテルアブレーションという治療を行った後、もともと持っていたApple Watchでご自身の脈をチェックされている方もいらっしゃいます。
カテーテルアブレーションの前後で比較し、後では脈が乱れなくなったと伝えていただくと、こちらとしてもうれしく思います。
Apple Watch心電図を最大限活かすための注意点
異常波形が出たら病院へ(12誘導心電図、ホルター心電図が必要)
異常の波形が出たら、迷わず病院を受診しましょう。
iPhone、iPadの心電図アプリで読み込めば診察中に記録を見せることができます。
実際に、動悸の頻度が少ない場合には波形を見せてもらうことで診断に結び付く可能性が高くなります。
まとめ:Apple Watchは「健康管理の武器の一つ」
日々の健康意識を高める優れたツールと言えます。
実際に診断に結びついた例もあり、診断に有用です。
また自覚症状がない場合でも、日頃から正常の心電図を記録していることで、症状が出た場合に、普段との違いを比較できます。
心電図アプリで異常が表示された場合には、不安がなくても医療機関での評価をおすすめします。
とくに動悸の頻度が少ないとなかなか診断に結びつかないため、Apple Watch心電図は有用なツールと言えます。